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偉大な兄を超えたか? 西武鉄道30000系

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 西武30000系の公開イベントに出かけてきました。いろいろ面白い内装はありましたが俺の興味はそこではありません。
 西武鉄道には20000系というとても優秀な車両があります。60~90キロの速度域において20000系の安定っぷりはすばらしいものがあります。はたして30000系は20000系を超えることができるのか。俺の興味はこの1点でした。

 まずはスペックから見てみましょう。車体幅が130ミリ広がったことは安定性でマイナスに作用するはずです。やじろべえの両腕が大きくなれば、当然振れ幅が広くなるわけですから。
 しかし、台車を覗き込んだとき妙なストッパに気づきました。エアサスを上で押さえ込んでいるんですね。このストッパは前から見ると逆凹型をしていて、空気ばねの左右動を押さえ込んでいます。
 なるほど……。ストッパで左右動を押さえ込むことで変位を小さくしているわけか。前後動を許して左右動を殺す。曲線走行安定性はかなり良好と見ました。
 んで、カタログを見るとスペクトル拡散制御と書いてあります。これはVVVFの変調を少しいじって、人間に耳障りでない周波数を選んで変調する方式です。音そのものはなくなったり小さくなったりはしないのですが、耳障りではない音を出すという意味で清音化を図っています。なかなかがんばっていますね。
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▲エアサスの上にかぶっているのが剛性を調整するカバー。前後方向のゆれを許容し、左右方向を抑え込む機構です。このほかレベリングバルブの位置を工夫したりして走行安定性を確保しています。

 さて、床下を覗き込んだときちょっと見づらかったのですが、減速装置はギアドライブ、いわゆるWNでした。部品点数が多く機構が複雑な中空軸平行カルダン駆動よりも、機構が簡単なWNドライブが保守性に優れ、伝達力も高いのですが、WNギアカップリングの機構上、どうしても惰性走行中に「がー」っという耳障りな音がします。20000系でもずいぶん静かではありますが、惰性走行中うなっています。
 しかしこのギアドライブは、惰性走行中もギアカップリングに力をかけることで振動を押さえ込む機構を採用しているじゃないですか。これはかなり静かに走るんじゃないかな。歯数比が6.21なので小田急のVSEとまではいかないけど、期待はできます。

 ん? 6.21?

 そうなんです。標準化車体のガイドラインにしたがっている30000系ですが、歯数比は6.21なんです。6.06でも6.53でもない、6.21。あえてこんな半端な歯数比を選んだとすれば何か理由があるはずです。理由がなければ6.53でしょ普通。その場でカタログを穴が開くほど見つめてみました。
 歯数比が6.21でモータ出力が165キロワット/1823rpm。車輪直径が840~860ミリってとこだろう。てことは定格速度は47.56キロか。結構高いな。つまり70~90キロくらいを常用する運転を想定しているわけか。これが6.53だと100キロあたりで苦しくなって、120キロあたりで頭打ちになるもんな。加速力3.3キロ/最高速度120キロを両立する解として、歯数比6.21をあえて選んだってなら理にかなっていますね。
 で、30000系は20000系より8両編成時の重量が8.3トン重くなってます。その代わり編成出力は20000系の2160キロワットに対し2640キロワット。8.3トンの重量増の割には出力でかくなっています。トン当たり出力は9.37キロワット(20000系)/11.06キロワット(30000系)。つまり力そのものは30000系のほうがある。てーことは歯数比を下げて高速方面に振っても、低速側はモータのパワーで何とかなるって寸法です。なるほどいい塩梅だ。その結果が20000系よりもちょいとよい加速力(3.3キロ/秒)として出てるってことなんですね。
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▲WNギアカップリングは惰性走行時の噛みあわせを工夫した新機構を搭載。WN独特のギアのイズを追放しています。

 大雑把に見てきましたが、30000系は起動時に20000系よりもグイっと力を込めて加速しますが、60~90キロはとても安定して加速。90キロ以上の加速余力もばっちりで、惰性走行時も20000系に比べ静か。曲線では車端部にいてもそれほど大きく振られない、安定した乗り心地が期待できるのではないかと踏んでいます。
 スマイルトレイン30000系。カタログスペックを見る限り素性はたいへんよいと思います。おそらく乗り心地も、20000系を超えているはずです。
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▲30000系は期待の新車ですが、だからといって20000系の優秀さが損なわれるということはありません。20000系は優秀な通勤電車です。
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ドレスダウンで見せた西武2000系のセンス

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 俗に、おしゃれをすることを「ドレスアップ」といいます。
 一方で、「ドレスダウン」という対になる言葉があります。ドレスアップにくらべ、ドレスダウンにはたいへんなセンスが必要です。単にコストを抑えて安っぽく着飾ればそれはただのケチです。決して見た目かっこよくはなりません。
 センスは知識です。ファッションセンス、すなわちファッションに対する歴史や知識、技法やバランスを熟知し、ギリギリの線で見切る。これこそがドレスダウンであり、結果生まれたものは決して貧乏くさく見えないものです。
 鉄道車両にもそれは当てはまります。見識持ったドレスダウンは、安物の部品を組み合わせても決して安っぽく見えないものです。

 西武2000系は1977年に登場した通勤型電車です。旧401系以来の4ドアで登場。車体の色は101系からベージュを引いた黄色一色。ドアはステンレスむき出しです。スタイリングは洗練されていますが、一見味がないと思われる向きもあるかもしれません。
 それはそれとしてこの2000系という電車、ものすごくメリハリが利いています。駅間距離が1キロ未満の区間すらある新宿線の各駅停車用ですから起動・停止を頻繁に行います。何も考えずに普通の抵抗制御車を走らせれば、乗客が前後にゆすられる機会が多いわけです。40キロくらいまで直列段でノッチを進めてガコン。並列段に切り替わって70キロくらいでノッチオフ。ガコン。そこから電制作動でカムがガコガコ回ってさらに制御段切り替えのたびにガコンガコン。抵抗制御なら当然こうなりますな。
 そこで2000系は界磁チョッパ制御を採用しました。電機子チョッパ制御なら起動から停止まで滑らかですが、ちっとばかし価格が高い。なんとなれば界磁チョッパは40キロまでのガコンガコンはありますが、そこからさきは分巻回路に電流流してスムースそのもの。特に各駅停車でありがちな、ノッチオフからすぐブレーキみたいな走りでは、0アンペア制御でそら滑らかなもんです。前後動をなしにするのではなく、少なくする。加速時には乗客はあらかじめ構えられますが、減速ポイントはマニアにしかわからんのでここは滑らかする必要がある。こういう見切りをするわけです。
 つまりここで西武鉄道はきっちり設計をつめている。4ドア化で乗降時間を短縮する代わり基本性能は101系に準じる。コストと性能の天秤を見極め界磁チョッパ制御を採用。制御機の台数が増えるとモロにコストが上がるので、価格を抑えるために8M1C。結果6連で3M3Tとはならず4M2Tとなりますが、まあそこは見切った。んで、界磁チョッパで滑らかに減速が聞くならブレーキも刻みの荒い電気指令式で十分。電気指令式なら青銅距離も読みやすいからこれまた各駅停車用にはうってつけなわけです。
 台車もミンデン台車やアルストム台車を採用せずぺデスタル式のFS-372。通風機もグローブ形ベンチレータとありとあらゆるところで見切りをつけています。しかし西武鉄道に限って言えばそれは決して安物電車にならないんです。
 なぜ西武鉄道はそこまで大胆にドレスダウンできるのか。

 システムとしての基本パッケージがとてもしっかりしているからです。

 界磁チョッパ制御は架線電圧が不安定ですとてきめんにブラシが荒れたり走行性能にむらが出ます。それは当然音や振動、乗り心地に跳ね返りますが、西武2000系に乗っていてそのような不快な思いをしたことはまずありません。乗り心地だって関東私鉄の中でむしろ上級の部類に入ります。なぜか。
 保線や電路整備が入念なんです。つまり車両を取り巻くインフラが一級品なんで、車両はそこそこの仕様でもしっかりとした走りができるんです。どんなに豪華な仕様を取り入れたって、整備が駄目なら本来の性能を発揮できません。
 西武2000系が企画されたとき、実はミンデン台車の使用が検討されました。しかし、価格差の割には乗り心地に顕著な差が出ないということで見送られた経緯があります。

 そんなことはありません。ミンデンの乗り心地がぺデスタルの一般的な台車と変わらないのならどこの事業者だって安い台車を採用します。しかし現実にはミンデンは民鉄で多く普及しています。
 値段分の差はあるんです。それなのに西武は「たいした差はない」と言い切った。
 それだけ保線に自信があるということです。
 2000系は通勤用なので大胆にドレスダウンしています。座面の前後幅は詰めましたが、座面はむしろ厚くとりました。安価な鋼鉄製なので窓は2段窓ですが、上段はバランサつきです。通風機はグロベンですがラインデリアつきですからハンデになりません。足回りに関してはこなれた標準品を使いつつも、インフラがよいのでしっかりとした走りを見せます。
 2000系は101系に比べあちこちで見切っていますが、決して安っぽく見えないのは設計者が見識を持ち、センスあるドレスダウンを行ったからです。センスは教養です。教養は知識です。それゆえに2000系は製造から30年を経過してもなお、古さを感じさせない優秀なスタイリングと走りを見せてくれるわけです。

 ドレスダウンとはお金をケチることではありません。お金をどのように使うかを見識もって検討することです。
 昨今は車両のコストダウンについて鉄道事業者の関心は高まっていますが、ケチな安物電車になるか、センスあるドレスダウン電車になるかは、事業者の見識にかかっているわけです。
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▲もっとも、見識もって作っても時代を読み違えると使いにくい電車ができてしまうこともあります。同じ西武鉄道でも3000系は狙いもわかるし素性は申し分ないんだけど、いかんせん時代を読みそこなった……。

鉄路のスーパーカー#03 JR東日本209系

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 常識を信じず見識に殉ずる。何かをなしえる人、歴史に名を残すものの行動規範はここに集約されています。
 京浜東北線から209系がなくなることが決まって、そろそろ沿線にもカメラ構える人が増えつつありますが、この209系という電車も、常識を信じず見識に殉じた電車でした。

 この電車が登場したとき、マニアは狼狽したのを覚えています。これまでの電車の常識から大きく離れたつくり、理解しがたい設計思想、意味不明な『寿命半分・価格半分・重量半分』という設計コンセプト。
 だって、小さいときからステンレスカーは超寿命。それって常識だったんです。価格は高いけど保守は簡単だし車体は軽いし寿命は長い。だから長い目で見ればお得ですよ、ってのがステンレスカーだったわけ。だからその真逆をいく209系なんか受け入れられなかった。常識に反していた。
 で、俺も含めた物を知らないマニアは『走るんです』なんて蔑称を209系につけました。わからんもんにはとりあえずレッテルを貼っておけ、みたいなところがあったのでしょう。とにかくネガを探してぶっ叩いたものです。今見ると本当に幼稚というかなんと言うか。

 でもね、そこから考えてみたんですよ。
 95キロワット4M6T。これで103系で引っ張った京浜東北線のダイヤに乗れる。京浜は表定速度40キロ台で決して遅い路線じゃないんですよ。てことはそれなりに走るってことです。そうなるとスペックを見なくてはなりません。

 ……軽い。M車で27.7トン。103系に比べて12トン軽い。
 運ぶものが軽ければ出力を下げてもよいってことは今なら当たり前なんですが、14年前の俺にはそれがわからなかった。209系が斬新すぎて脳がいかに回っていなかったってことですな。
 そして過負荷運転を容認。160%程度のオーバーロードを恒常的に行って、数値以上のパワーを出していることに気づいた。まあ大体150キロワット相当のパワーは出していたわけで、こんだけの条件が揃えば、京浜東北線で103系に伍して走るには十分の性能だってことに気づいたわけです。

 そうなると急にときめきましたね。俺。
 すげえよこの電車。これ考えた人は通勤電車を変えようという強い意志と見識を持って、設計製造している。俺もこの電車に関しては常識を捨てて見なくてはならんと思いました。

 閑話休題。で、車体が軽くなれば出力は小さくてすむ。出力が小さければ負荷も小さくなる。であれば振動も騒音も小さくなる。てことはだ、歯数比を大きく取って加速性能を高めることもできる。そんなもんで歯数比7.07ですよ7.07。103系よりも高い歯数比とって加速稼いでいます。
 こんなに高い歯数比だと、高速苦しいだろおい。103系なんか80キロでアップアップするぞ。そこで誘導電動機をもってきた。定格1890rpm、オーバーロードで5300rpmときた。フラッシュオーバーの心配がないから温度上昇だけ心配すればいいわけで、高速域での頭打ちを高回転でカバーしたわけですね。結果90キロから上でモータがギャンギャンうなりますがそこは割り切った。いいんだよ京浜東北の最高速度は90キロなんだからさ。

 そんでもって調べれば調べるほど、209系のすごさというのがわかってきたわけです。側面は1.5ミリのペランペランなSUS304。安い標準品つかってる。軽い側板には軽い屋根ってことで0.6ミリ板を屋根に使い。強度を保つため窓は固定。ものすごい合理的なつくりになってます。
 車体を軽く作れば台枠だってその分軽くできる。ついでに台車間距離を詰めてビームの長さを短くすればヤング率を高く取れてその分強度を下げられる。強度を下げるのは結果軽量化につながる。軽くなればモータ出力やMT比を下げられる。当然そうなれば編成重量を軽くできる。ブレーキだって軽くなった分負荷が減る。4Mの回生で10キロくらいまで引っ張れる。なんとなれば車体が軽いからブレーキもそこそこで言い訳です。
 とにかくすべてが軽量化へ回っている。『走るんです』なんていったやつは誰だ。209系はものすごくまっとうな論理と高い見識で軽量化を果たした優秀な電車じゃないか。

 いやまて。でもこれすぐヘタるよね。軽量化したってことは余分なのりしろがないってことでしょ。アルミホイル走らせてるようなもんだもん。縦揺れに対してはこの電車、てきめんに弱いよね。
 ああだから寿命13年なのか。納得。
 つまり、設計者の見識は「電車は軽ければ軽いほどいい」という柱があって、じゃあ軽くするにはどうすればいいという流れにつながる。そこで材質だけじゃなく工法まで見直した。そして、軽くなった分さらにどこを削れるかという検討をした結果、固定窓で小出力の実用的な電車ができた。

 「頑丈なステンレスカー」という常識にとらわれず、「電車は軽ければ軽いほどよい」という見識をもとにくみ上げた電車。その強い意志は見事に歴史に名を残したわけです。
 常識は「それ常識だよ」の一言で人間の考える力を縛ってしまいます。
 見識は「物事はこうあるべきだ」という理想を目指し、新しいものを生み出します。
 常識を捨て見識に殉じる。209系はそんなことを教えてくれた電車なのです。
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▲その見識と強い意志は、鉄道車両のつくりを大きく変革し、標準車体へとつながりました。

俺の好きな電車 その3 京成3400形

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 京成電鉄の白眉といえば、やっぱり3700形です。足回りは東洋電機渾身のでき。特に10キロから停止へのブレーキングはぴたっと線路に貼りつくように止まります。その走りのよさは汎用通勤型電車としては完成の域にあります。
 何がすごいって3700形には普通電車から特急電車まで、オールラウンドで高性能をたたき出そうという強い意志を感じます。それは低速域の強烈な減速力であり、マスコンのP2で軽々と飛び出していく軽快さなど、とにかく端々に「高性能電車としての強い意志」が認められます。
 一方で3400形は、足回りは元スカイライナーAE1形の再生品です。界磁チョッパ制御ですが足回りは高速安定性能に振られているので低速のパンチ力がすっかすかです。そもそも3400形には直列段がありません。並列起動で無理やり45キロまで持っていきますから、そらパンチ力が弱いのは当たり前です。ブレーキだって回生ブレーキですが、直列段がないってことは40キロくらいで回生が落ちてしまうわけでして、3700形に比べると停止寸前で見事にもたつきます。
 車体も3700形のステンレスに対して普通鋼。鋼のしなやかさはステンレスにはない特性で、たとえばこれがスカイライナーあたりであればステンレスにはない静粛性を容易に得られるのですが、ストップアンドゴーのきつい通勤型ではその重さが足かせになります。
 結果、マスコンの操作に対してワンテンポ遅れる、慣性が効いて制動距離が読めないなど、デメリットが露呈するわけです。出力は3400形のほうが少しだけありますが、これは車体の重さと低速域でのパワーロスで同等以下と見ていいでしょう。こと運転士の間でも、3400形の評判はあまりよくありません。さもありなん。雨の日の上り坂などではとても運転しづらい車両です。

 3700形と3400形、比べてみてどっちがいいかといわれれば3700形です。駿馬と駄馬くらいの違いがあります。でも、好きと嫌いはまた別なんです。
 3700形は軽い、きびきび走る。その点では文句のつけようがありません。3400形はドンくさい、もたつく。しかし3400形の足回り、特に界磁チョッパ制御はこと走りにおいてはたいへん上品なんです。
 3400形のご先祖様であるAE1は、上野から成田までノンストップで走る電車でした。つまりストップアンドゴーはまったく考えなくていいわけです。であれば弱め界磁制御にさえ入ってしまえばシームレスに速度制御が利く界磁チョッパ制御はまさに、理想の制御装置でした。
 3700形のVVVFだってできるじゃないか、と思うかもしれませんが、ゼロ電流からの速度制御は界磁チョッパにまだまだかないません。さらにレスポンスの鈍さが幸いして、京成のように線形が悪い路線だと滑らかに加減速して抜けていくんですね。3700形も滑らかといえばそうなんですが、その軽量・高性能があだになっている部分がなにきにもあらず。けっこう体を前後に持っていかれるんです。さらに5キロまで回生ブレーキが効きますし、よく効く空気ブレーキと軽量車体ですから見事なまでにぴたっと止まる。ダルな部分がないんです。
 3400形の重くてダルな部分って、実はけっこう心地よい。運転士さんには申し訳ないけど、乗客として乗る分にはとてもよいクルマです。高速域での船みたいな乗り心地も、これはこれでいい感じです。

 3400形は3700形と異なり、あくまでも廃品流用の電車です。そこに製作者の強い意志が入り込む余地はありません。しいて言えば「できるだけ安く上げよう」という後ろ向きの意思でしょうか。本当にデキで言えばほめられたものではありません。
 3400形は、いい悪いでいえば悪い。でも好き嫌いでいえば大好きなクルマです。
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▲東洋電機の最高傑作。究極の汎用車を目指した3700形。

俺の嫌いだけどすばらしい電車 小田急3000形

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 「伝統」って何だろう。
 小田急の電車には、かねてより強烈な何者かの意志がありました。速さのためにさまざまなものを捨てた3000形SEをはじめ、通勤型電車にしてもたとえば、2200形で高性能を達成した後、2400形という経済車を作りました。高性能車はお金がかかる。価格を下げて1両でも多く新車を作れってことです。
 しかし2400形には「コストは落としても性能は落とさない」という強い意志がありました。モーター車は許される限り重く、トレーラーは許される限り軽く。そのためにデハとクハで全長が大きく異なった車両を作ってしまう。小田急というと優雅なイメージがありますが、実はとんでもなくファナティックな会社なのです。

 3000形という通勤電車。かつての小田急の看板であった「3000」を引き継いでいますが、見た目は無骨そのものです。丸みを帯びた小田急の電車からすれば異端です。
 ここ10年で安くなった言葉の一つに「こだわり」があります。もしかしたら伝統とはこだわりのことと勘違いしている人の言葉だったのかもしれません。小田急3000形を見て、口の悪いマニアはこういいました。

「小田急が伝統を捨てた」

 伝統?
 なるほど3000形では小田急は「こだわり」を捨てたかもしれない。しかし、これは声を大にしていいたいのですが、伝統は捨ててなんかいません。伝統とはすなわち強い意志。理想があってそこに向かう姿勢こそが伝統なのです。見た目などにこだわるのは、そこで思考停止した人間の言葉。こだわりはそこから先に道はありませんが、強い意志は理想への道が続いています。
 だから伝統は続くんです。でもこだわりは一代でポシャるんです。
 じゃあ小田急の強い意志とは何か。

 スピードです。

 特急電車は、たとえ30000形EXEでも、新宿~小田原を60分で走れるように作ってあります。50000形VSEは速さと快適性を両立させるべく、言ってしまえば壮大な無駄と高い技術をふんだんに組み込んでいます。歯数比4で大馬力モータを回す。こんな馬鹿をできるのは伝統ある小田急だからです。小田急の伝統、それはスピードという強い意志を常に車両の理想としているからです。

 ですから3000形で小田急は伝統をすてたりなどしていません。

 3000形。確かに見た目はまったく小田急らしからぬ風体です。しかしいざ動き出せばその辺の標準型車両とは一線を画す静粛性と乗り心地に気づくはずです。静粛、そして快走。
 他社の標準型車体なら、100キロの速度域ではぱったんぱったん車端部がバンプするはず。軽量車体なんだからそうなるんです。なのに小田急3000形はそうならない。そうならないということは何か違いがあるということです。
 ひとつは保線。保線をしっかりしていれば車両の作りこみはそこそこでも乗り心地は出せます。もうひとつは車両のつくりに無駄がない。音が出るってことは無駄が出ているってことです。音が小さいということは無駄なくエネルギが使われているということです。それはそういう風に設計しないとそうなりません。そういう風とは、無駄をなくす、つまり品質のばらつきを高い次元で小さくすることです。
 理想は隙間なく作ること。しかし隙間なくぴっちり作ったら摩擦抵抗でドアは開かない窓も開かない。車輪の転がりも悪くなる。だから隙間は作る。その制度をどのオーダーでそろえるか。
 そこに設計の妙が出てきます。もちろん手間はかかります。手間はコストです。なのに小田急はそれをやります。

 そして小田急の強い意志は、3000形登場後にもあらわれます。後期形はモータ出力を180キロワットから190キロワットに上げ、歯数比を7.07から6.06へ一気に下げています。6.53じゃないんです。6.06です。これが何を意味するか。
 低速域では高回転で加速を維持し、高速域を高く取ったセッティング。
 そう。小田急の伝統は死んでなんかいないんです。ファナティックでエキセントリック。高性能で速い電車でなければ満足できない。それが小田急なんです。
 3000形が小田急らしくない? そんなことはないんです。3000形はどこから見ても小田急の伝統ある通勤型電車なんです。
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▲後期形で更なるスピードへのこだわりを見せた3000形。

俺の好きな電車#2 山陽電鉄5000系

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 華はないけどいぶし銀の名優、かつての銀幕には欠かせない存在でした。
 鉄道も然り。華やかな特急電車だけでなく、機能性に優れた通勤電車、経済性に優れたローカル電車などが揃って初めてシステムとして優れたものになります。

 山陽電車という私鉄のスター5000系。俺の大好きな電車です。大阪と姫路を結ぶ直通特急の主力電車として活躍しています。そういった意味ではスターなんだと思いますが、山陽電車というちょっと地味な(失礼)会社の出自がそうさせるのか、並行するJR西日本の223系に比べて今ひとつ華がありません。
 しかし山陽5000系は、華はともかく卓越した実力を持った電車です。線路の状態はせいぜい「並」、最高速度も110キロですが、時には舞子公園あたりから明石までJRの快速電車と結構なデッドヒートを繰り広げます。
 5000系の足を支えるMB-3020というモータ。出力こそ125キロワットですが、高速域での伸びは最新モードの電車に伍してすばらしいものがあります。221系とよーいドン! すると、出だしはほぼ同等、60キロあたりからぐんぐん伸びて221系をちぎり、110キロまで加速していきます。その走りは素性の優秀さと育ちのよさに満ち溢れた、しっかりとしたものです。
 このMB-3020というモータ、先代の3000系と基本的には同じ物です。基本設計はなんと昭和20年代。ハイテクのハの字もなかったことに作られました。定格回転数や端子電圧こそ向上してはいますが、技術的には60年近くにわたって使われている骨董品みたいなモータです。

 山陽電車は2000系グループでこそさまざまな試行錯誤をしましたが、3000系以降では徹底的に標準化思想を推し進めてきました。とはいえ20年以上も時代が進めば技術もそれなりに進化するわけで、実際5000系の設計時に界磁チョッパ制御にしようかという話もありました。
 しかし山陽電車は、5000系を界磁チョッパ制御にはしませんでした。
 ここに山陽電車技術陣の高い見識を見て取れます。

 界磁チョッパ制御にすることで確かに走りはよくなります。が、整備の面を考えたら複巻モータの電車を入れることは必ずしも良策ではありません。せっかく3000系でシステムの統一を進めてきたのに、5000系でまたシステムを複雑にするのは、山陽電車の企業規模から言って愚策です。
 であれば、「優秀な素性を持つMB-3020モータでいいじゃないか」というのは見識ある結論です。とはいえ、制御装置は界磁添加励磁制御としてちゃんと時代に見合ったシステムを投入しています。
 界磁添加励磁制御は、外部電源から電流を制御するので(弱め界磁領域に達すれば)加減速が非常に滑らか。特に高速側は全速度域で弱め界磁がかかるものですから、抵抗が抜ける40キロ以上の速度域ではとにかくすばらしい走りになる。当時の山陽電車においてはベストデザインと断言できましょう。これを歯数比5.47で回すのですから、悪い走りなわけがありません。

 車体はアルミ合金製。台車間距離は12450ミリなので、アルミボディの軽さ、柔らかさとショートホイールベースによる剛性感はかなりのもので、特に軌道が安定している阪神線内ではどっしりとしたすばらしい乗り心地を示します。軌道がやや劣る山陽線内でも、振動やゆれをしっかりとボディが支えていることがよくわかります。とにかく優れた基本パッケージと丁寧な作り。実に感動的ですらあります。
 加えて『山陽スペシャル』とまで言われるかけ心地のよい座席。背面の角度にはやや不満がありますが(もう少し立ったほうが疲れない)、座面は厚く、座面が体に合わせてたわむことで面圧が安定し、お尻と座面の接地面積が大きくなり、結果として体重を分散して支えることになりますから長時間の乗車でも疲れない作りになっています(最近の硬い座席が疲れる理由は、座席でなく体が変形して体重を支える、つまり面圧が不安定だからです)。座面の硬さと厚さのセッティングは設備のよい関西私鉄の中でも特筆に価します。

 デビュー当時は3両編成で普通車用として投入されましたが、これだけ優れた電車ですからぜひ特急に使ってほしいという要望は当然出ます。結果順調に数を増やし、6両編成は直通特急として、4両編成は普通車として大活躍しています。
 並行するJR西日本の新快速があまりにも華があるため、結果として地味な存在になっている山陽5000系ですが、その基本パッケージの優秀さと山陽技術陣の見識の高さ、その結果得られた快適性は、決して223系に劣るところはありません。
 『美しい電車』とは、こういう電車のことを言うのです。
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君の青春は輝いているか。俺はすさんでいる。

<前回の続きです>
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▲大垣からの快速電車はすでに先客で満杯。あきらめて樽見鉄道の写真を撮っていたら、食料の補給を忘れてしまいました。

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青春アゲイン! 京都~東京普通列車の旅

心はいつまでも若者でいたいところですが、物理にはやはり逆らえません。体は疲れやすくなり、目はしょぼしょぼ。高等部が薄くなってきている今日この頃です。
ああ、このまま俺は老いていくのか。いかん、こんなことではいかん! ってことで、自らを律するために精神修養の旅に出ました。とはいえいきなり荒行をしてくたばってしまっては意味がありませんので、そこそこの修行ということで。

青春18きっぷ、という乗車券があります。1日中普通列車乗り放題という、得なんだか損なんだかわからんきっぷです。名前からして若々しいこの切符を使い、京都から東京まで普通列車で帰ろうというわけです。なんかこう書いただけでうんざりしますが、それでもうまくすれば京都から東京まで10時間ちょっとです。

10時間……。

そういや昔俺はこのきっぷを使って、福岡県の南福岡から東京まで、24時間に渡る旅行をしたっけ。若いって怖いな。

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俺の好きな電車#1~相模鉄道5000系

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 5000系が昭和30年に登場したときは、超ハイテクに身をまとった斬新な電車でした。応答性のいい電磁直通ブレーキに軽量ボディマウント構造。小出力モータで全軸駆動するトルク重視の設計。当時神奈川の田舎私鉄程度の認識でしかなかった相模鉄道に舞い降りた、最新モードの電車でした。
 性能はまったく持って申し分ない優秀車でしたが、相模鉄道沿線が発展し、17~18メートル級の5000系では収容力の問題が出てきました。せっかくの高性能機器を廃棄するのはもったいない。そこで、機器を流用し、20メートル冷房車に改造することとなりました。
 とはいえ、車体が伸びて冷房を乗っけると当然重くなります。重くなるということは性能が落ちるということです。5000系の重量は約27トン。むちゃくちゃ軽いです。これをさらに軽量化して20メートル車にする。これは大変なことです。

 5000系は車体の材質にアルミボディを用いました。しかし、鋼体をアルミにするだけではまだまだだめでした。そこで、骨組みと外板が重なる部分は板を張らず、骨組みをむき出しにするという手法をとりました。これによって更なる軽量化を達成し、性能を落とさずに車体を延長することができたのです。弁当箱のように無骨でつぎはぎの目立つ車体ですが、これはこういった考え抜かれた設計の賜物であり、優れたデザインなのです。

 デザインは見てくれじゃないんです。機能なんです。
 相鉄5000系はベスト・デザインなのです。

 こうして車体を延長された5000系は5100系と名前を改め、激化する相鉄の通勤輸送を支えたのでありました。めでたしめでたし……というわけにはいかず、今度は走行装置がヘタッてきました。
 それじゃあということで今度は足回りを全とっかえ。ついでに名前も元の5000系に戻してしまいました。名前以外は元の面影がまったくなくなっちまいましたが、常に先進の技術をぶち込まれた5000系電車というのは、俺にとって光り輝く電車なのです。たとえ外見がつぎはぎだらけだろうが、そりゃあもう光り輝いてるんです。

 5000系は10両編成2本が活躍していましたが、老朽化により2005年にいったん全廃されました。しかしここで物語が終わらないのが、名車の名車たるゆえんでしょう。
 5000系が運用を離脱したときと前後して、8000系が1編成事故で使用不能(後に廃車)となったため、1編成が予備車で復活。おまけに最近ではパンタグラフを新しくしたりもしています。
 現在でも急行や快速を中心に活躍しています。予備的存在であり、ほかの車輌が検査などで工場に入場し、頭数が足りなくならないと走りませんが……。

 なお、5000系と似た車輌で7000系がありますが、ヘッドライトや側面帯が異なるので見分けはカンタンです。

070508b.jpg
▲奥が7000系、手前が5000系。ヘッドライトの位置が異なるので並べば見分けは簡単です。並べばな。

ああ、もっと撮影しておけばよかった

 ネットの情報によると、東武8000系81115編成が津覇車輌に行ってしまったとのこと。ついに東上線から未更新車が消えてしまったことになります。
 7日早朝、115番が小川町に向かって走り去ったのを見たのが結局最後になりました。
 ちなみにこの顔です。
070412a.jpg
 俺は地元ということで、まーいつでも撮影できるでしょと思っておりまして、あまり真剣に8000系を撮影していませんでした。そして気づいたら東上線でオリジナルの顔を残しているのは89番と115番の2本だけになっていました。

 鉄道マニアは土壇場にならないと動かない。わかっちゃいるけど動かない。
 そんなわけであわてて撮影を行いましたが、89番にはなかなかめぐり合わず、結局この2枚しか撮影していません。下の写真に至っては、あわててカメラを構えているのがまる分かりです。
070412b.jpg
070412c.jpg
 89番の二の足は踏むまいと115番はそこそこ撮影しましたが、それでも枚数にしたら高が知れています。ああ、なくなってわかる「もっと撮影しておけばよかった」。
 まったく後悔先に立たず。


 だからといって、次に消えるであろう8番、11番、12番を撮影しているかといえば、大して撮ってはいないんですがね。だってまだ時間あるだろうし。
070412e.jpg
070412f.jpg
070412d.jpg8番についてはこんな失敗した写真1枚しかありませんでした。結構乗っているんですけど、そういうときに限ってカメラ持ってないんだよね……。


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サマンサ

Author:サマンサ
 三度の飯より電車が好きな鉄道マニアの戯言。
 似顔絵は■裂斬ブログ■より。

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