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鉄路のスーパーカー#03 JR東日本209系

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 常識を信じず見識に殉ずる。何かをなしえる人、歴史に名を残すものの行動規範はここに集約されています。
 京浜東北線から209系がなくなることが決まって、そろそろ沿線にもカメラ構える人が増えつつありますが、この209系という電車も、常識を信じず見識に殉じた電車でした。

 この電車が登場したとき、マニアは狼狽したのを覚えています。これまでの電車の常識から大きく離れたつくり、理解しがたい設計思想、意味不明な『寿命半分・価格半分・重量半分』という設計コンセプト。
 だって、小さいときからステンレスカーは超寿命。それって常識だったんです。価格は高いけど保守は簡単だし車体は軽いし寿命は長い。だから長い目で見ればお得ですよ、ってのがステンレスカーだったわけ。だからその真逆をいく209系なんか受け入れられなかった。常識に反していた。
 で、俺も含めた物を知らないマニアは『走るんです』なんて蔑称を209系につけました。わからんもんにはとりあえずレッテルを貼っておけ、みたいなところがあったのでしょう。とにかくネガを探してぶっ叩いたものです。今見ると本当に幼稚というかなんと言うか。

 でもね、そこから考えてみたんですよ。
 95キロワット4M6T。これで103系で引っ張った京浜東北線のダイヤに乗れる。京浜は表定速度40キロ台で決して遅い路線じゃないんですよ。てことはそれなりに走るってことです。そうなるとスペックを見なくてはなりません。

 ……軽い。M車で27.7トン。103系に比べて12トン軽い。
 運ぶものが軽ければ出力を下げてもよいってことは今なら当たり前なんですが、14年前の俺にはそれがわからなかった。209系が斬新すぎて脳がいかに回っていなかったってことですな。
 そして過負荷運転を容認。160%程度のオーバーロードを恒常的に行って、数値以上のパワーを出していることに気づいた。まあ大体150キロワット相当のパワーは出していたわけで、こんだけの条件が揃えば、京浜東北線で103系に伍して走るには十分の性能だってことに気づいたわけです。

 そうなると急にときめきましたね。俺。
 すげえよこの電車。これ考えた人は通勤電車を変えようという強い意志と見識を持って、設計製造している。俺もこの電車に関しては常識を捨てて見なくてはならんと思いました。

 閑話休題。で、車体が軽くなれば出力は小さくてすむ。出力が小さければ負荷も小さくなる。であれば振動も騒音も小さくなる。てことはだ、歯数比を大きく取って加速性能を高めることもできる。そんなもんで歯数比7.07ですよ7.07。103系よりも高い歯数比とって加速稼いでいます。
 こんなに高い歯数比だと、高速苦しいだろおい。103系なんか80キロでアップアップするぞ。そこで誘導電動機をもってきた。定格1890rpm、オーバーロードで5300rpmときた。フラッシュオーバーの心配がないから温度上昇だけ心配すればいいわけで、高速域での頭打ちを高回転でカバーしたわけですね。結果90キロから上でモータがギャンギャンうなりますがそこは割り切った。いいんだよ京浜東北の最高速度は90キロなんだからさ。

 そんでもって調べれば調べるほど、209系のすごさというのがわかってきたわけです。側面は1.5ミリのペランペランなSUS304。安い標準品つかってる。軽い側板には軽い屋根ってことで0.6ミリ板を屋根に使い。強度を保つため窓は固定。ものすごい合理的なつくりになってます。
 車体を軽く作れば台枠だってその分軽くできる。ついでに台車間距離を詰めてビームの長さを短くすればヤング率を高く取れてその分強度を下げられる。強度を下げるのは結果軽量化につながる。軽くなればモータ出力やMT比を下げられる。当然そうなれば編成重量を軽くできる。ブレーキだって軽くなった分負荷が減る。4Mの回生で10キロくらいまで引っ張れる。なんとなれば車体が軽いからブレーキもそこそこで言い訳です。
 とにかくすべてが軽量化へ回っている。『走るんです』なんていったやつは誰だ。209系はものすごくまっとうな論理と高い見識で軽量化を果たした優秀な電車じゃないか。

 いやまて。でもこれすぐヘタるよね。軽量化したってことは余分なのりしろがないってことでしょ。アルミホイル走らせてるようなもんだもん。縦揺れに対してはこの電車、てきめんに弱いよね。
 ああだから寿命13年なのか。納得。
 つまり、設計者の見識は「電車は軽ければ軽いほどいい」という柱があって、じゃあ軽くするにはどうすればいいという流れにつながる。そこで材質だけじゃなく工法まで見直した。そして、軽くなった分さらにどこを削れるかという検討をした結果、固定窓で小出力の実用的な電車ができた。

 「頑丈なステンレスカー」という常識にとらわれず、「電車は軽ければ軽いほどよい」という見識をもとにくみ上げた電車。その強い意志は見事に歴史に名を残したわけです。
 常識は「それ常識だよ」の一言で人間の考える力を縛ってしまいます。
 見識は「物事はこうあるべきだ」という理想を目指し、新しいものを生み出します。
 常識を捨て見識に殉じる。209系はそんなことを教えてくれた電車なのです。
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▲その見識と強い意志は、鉄道車両のつくりを大きく変革し、標準車体へとつながりました。
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俺の好きな電車 その3 京成3400形

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 京成電鉄の白眉といえば、やっぱり3700形です。足回りは東洋電機渾身のでき。特に10キロから停止へのブレーキングはぴたっと線路に貼りつくように止まります。その走りのよさは汎用通勤型電車としては完成の域にあります。
 何がすごいって3700形には普通電車から特急電車まで、オールラウンドで高性能をたたき出そうという強い意志を感じます。それは低速域の強烈な減速力であり、マスコンのP2で軽々と飛び出していく軽快さなど、とにかく端々に「高性能電車としての強い意志」が認められます。
 一方で3400形は、足回りは元スカイライナーAE1形の再生品です。界磁チョッパ制御ですが足回りは高速安定性能に振られているので低速のパンチ力がすっかすかです。そもそも3400形には直列段がありません。並列起動で無理やり45キロまで持っていきますから、そらパンチ力が弱いのは当たり前です。ブレーキだって回生ブレーキですが、直列段がないってことは40キロくらいで回生が落ちてしまうわけでして、3700形に比べると停止寸前で見事にもたつきます。
 車体も3700形のステンレスに対して普通鋼。鋼のしなやかさはステンレスにはない特性で、たとえばこれがスカイライナーあたりであればステンレスにはない静粛性を容易に得られるのですが、ストップアンドゴーのきつい通勤型ではその重さが足かせになります。
 結果、マスコンの操作に対してワンテンポ遅れる、慣性が効いて制動距離が読めないなど、デメリットが露呈するわけです。出力は3400形のほうが少しだけありますが、これは車体の重さと低速域でのパワーロスで同等以下と見ていいでしょう。こと運転士の間でも、3400形の評判はあまりよくありません。さもありなん。雨の日の上り坂などではとても運転しづらい車両です。

 3700形と3400形、比べてみてどっちがいいかといわれれば3700形です。駿馬と駄馬くらいの違いがあります。でも、好きと嫌いはまた別なんです。
 3700形は軽い、きびきび走る。その点では文句のつけようがありません。3400形はドンくさい、もたつく。しかし3400形の足回り、特に界磁チョッパ制御はこと走りにおいてはたいへん上品なんです。
 3400形のご先祖様であるAE1は、上野から成田までノンストップで走る電車でした。つまりストップアンドゴーはまったく考えなくていいわけです。であれば弱め界磁制御にさえ入ってしまえばシームレスに速度制御が利く界磁チョッパ制御はまさに、理想の制御装置でした。
 3700形のVVVFだってできるじゃないか、と思うかもしれませんが、ゼロ電流からの速度制御は界磁チョッパにまだまだかないません。さらにレスポンスの鈍さが幸いして、京成のように線形が悪い路線だと滑らかに加減速して抜けていくんですね。3700形も滑らかといえばそうなんですが、その軽量・高性能があだになっている部分がなにきにもあらず。けっこう体を前後に持っていかれるんです。さらに5キロまで回生ブレーキが効きますし、よく効く空気ブレーキと軽量車体ですから見事なまでにぴたっと止まる。ダルな部分がないんです。
 3400形の重くてダルな部分って、実はけっこう心地よい。運転士さんには申し訳ないけど、乗客として乗る分にはとてもよいクルマです。高速域での船みたいな乗り心地も、これはこれでいい感じです。

 3400形は3700形と異なり、あくまでも廃品流用の電車です。そこに製作者の強い意志が入り込む余地はありません。しいて言えば「できるだけ安く上げよう」という後ろ向きの意思でしょうか。本当にデキで言えばほめられたものではありません。
 3400形は、いい悪いでいえば悪い。でも好き嫌いでいえば大好きなクルマです。
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▲東洋電機の最高傑作。究極の汎用車を目指した3700形。

俺の嫌いだけどすばらしい電車 小田急3000形

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 「伝統」って何だろう。
 小田急の電車には、かねてより強烈な何者かの意志がありました。速さのためにさまざまなものを捨てた3000形SEをはじめ、通勤型電車にしてもたとえば、2200形で高性能を達成した後、2400形という経済車を作りました。高性能車はお金がかかる。価格を下げて1両でも多く新車を作れってことです。
 しかし2400形には「コストは落としても性能は落とさない」という強い意志がありました。モーター車は許される限り重く、トレーラーは許される限り軽く。そのためにデハとクハで全長が大きく異なった車両を作ってしまう。小田急というと優雅なイメージがありますが、実はとんでもなくファナティックな会社なのです。

 3000形という通勤電車。かつての小田急の看板であった「3000」を引き継いでいますが、見た目は無骨そのものです。丸みを帯びた小田急の電車からすれば異端です。
 ここ10年で安くなった言葉の一つに「こだわり」があります。もしかしたら伝統とはこだわりのことと勘違いしている人の言葉だったのかもしれません。小田急3000形を見て、口の悪いマニアはこういいました。

「小田急が伝統を捨てた」

 伝統?
 なるほど3000形では小田急は「こだわり」を捨てたかもしれない。しかし、これは声を大にしていいたいのですが、伝統は捨ててなんかいません。伝統とはすなわち強い意志。理想があってそこに向かう姿勢こそが伝統なのです。見た目などにこだわるのは、そこで思考停止した人間の言葉。こだわりはそこから先に道はありませんが、強い意志は理想への道が続いています。
 だから伝統は続くんです。でもこだわりは一代でポシャるんです。
 じゃあ小田急の強い意志とは何か。

 スピードです。

 特急電車は、たとえ30000形EXEでも、新宿~小田原を60分で走れるように作ってあります。50000形VSEは速さと快適性を両立させるべく、言ってしまえば壮大な無駄と高い技術をふんだんに組み込んでいます。歯数比4で大馬力モータを回す。こんな馬鹿をできるのは伝統ある小田急だからです。小田急の伝統、それはスピードという強い意志を常に車両の理想としているからです。

 ですから3000形で小田急は伝統をすてたりなどしていません。

 3000形。確かに見た目はまったく小田急らしからぬ風体です。しかしいざ動き出せばその辺の標準型車両とは一線を画す静粛性と乗り心地に気づくはずです。静粛、そして快走。
 他社の標準型車体なら、100キロの速度域ではぱったんぱったん車端部がバンプするはず。軽量車体なんだからそうなるんです。なのに小田急3000形はそうならない。そうならないということは何か違いがあるということです。
 ひとつは保線。保線をしっかりしていれば車両の作りこみはそこそこでも乗り心地は出せます。もうひとつは車両のつくりに無駄がない。音が出るってことは無駄が出ているってことです。音が小さいということは無駄なくエネルギが使われているということです。それはそういう風に設計しないとそうなりません。そういう風とは、無駄をなくす、つまり品質のばらつきを高い次元で小さくすることです。
 理想は隙間なく作ること。しかし隙間なくぴっちり作ったら摩擦抵抗でドアは開かない窓も開かない。車輪の転がりも悪くなる。だから隙間は作る。その制度をどのオーダーでそろえるか。
 そこに設計の妙が出てきます。もちろん手間はかかります。手間はコストです。なのに小田急はそれをやります。

 そして小田急の強い意志は、3000形登場後にもあらわれます。後期形はモータ出力を180キロワットから190キロワットに上げ、歯数比を7.07から6.06へ一気に下げています。6.53じゃないんです。6.06です。これが何を意味するか。
 低速域では高回転で加速を維持し、高速域を高く取ったセッティング。
 そう。小田急の伝統は死んでなんかいないんです。ファナティックでエキセントリック。高性能で速い電車でなければ満足できない。それが小田急なんです。
 3000形が小田急らしくない? そんなことはないんです。3000形はどこから見ても小田急の伝統ある通勤型電車なんです。
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▲後期形で更なるスピードへのこだわりを見せた3000形。

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サマンサ

Author:サマンサ
 三度の飯より電車が好きな鉄道マニアの戯言。
 似顔絵は■裂斬ブログ■より。

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