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ドレスダウンで見せた西武2000系のセンス

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 俗に、おしゃれをすることを「ドレスアップ」といいます。
 一方で、「ドレスダウン」という対になる言葉があります。ドレスアップにくらべ、ドレスダウンにはたいへんなセンスが必要です。単にコストを抑えて安っぽく着飾ればそれはただのケチです。決して見た目かっこよくはなりません。
 センスは知識です。ファッションセンス、すなわちファッションに対する歴史や知識、技法やバランスを熟知し、ギリギリの線で見切る。これこそがドレスダウンであり、結果生まれたものは決して貧乏くさく見えないものです。
 鉄道車両にもそれは当てはまります。見識持ったドレスダウンは、安物の部品を組み合わせても決して安っぽく見えないものです。

 西武2000系は1977年に登場した通勤型電車です。旧401系以来の4ドアで登場。車体の色は101系からベージュを引いた黄色一色。ドアはステンレスむき出しです。スタイリングは洗練されていますが、一見味がないと思われる向きもあるかもしれません。
 それはそれとしてこの2000系という電車、ものすごくメリハリが利いています。駅間距離が1キロ未満の区間すらある新宿線の各駅停車用ですから起動・停止を頻繁に行います。何も考えずに普通の抵抗制御車を走らせれば、乗客が前後にゆすられる機会が多いわけです。40キロくらいまで直列段でノッチを進めてガコン。並列段に切り替わって70キロくらいでノッチオフ。ガコン。そこから電制作動でカムがガコガコ回ってさらに制御段切り替えのたびにガコンガコン。抵抗制御なら当然こうなりますな。
 そこで2000系は界磁チョッパ制御を採用しました。電機子チョッパ制御なら起動から停止まで滑らかですが、ちっとばかし価格が高い。なんとなれば界磁チョッパは40キロまでのガコンガコンはありますが、そこからさきは分巻回路に電流流してスムースそのもの。特に各駅停車でありがちな、ノッチオフからすぐブレーキみたいな走りでは、0アンペア制御でそら滑らかなもんです。前後動をなしにするのではなく、少なくする。加速時には乗客はあらかじめ構えられますが、減速ポイントはマニアにしかわからんのでここは滑らかする必要がある。こういう見切りをするわけです。
 つまりここで西武鉄道はきっちり設計をつめている。4ドア化で乗降時間を短縮する代わり基本性能は101系に準じる。コストと性能の天秤を見極め界磁チョッパ制御を採用。制御機の台数が増えるとモロにコストが上がるので、価格を抑えるために8M1C。結果6連で3M3Tとはならず4M2Tとなりますが、まあそこは見切った。んで、界磁チョッパで滑らかに減速が聞くならブレーキも刻みの荒い電気指令式で十分。電気指令式なら青銅距離も読みやすいからこれまた各駅停車用にはうってつけなわけです。
 台車もミンデン台車やアルストム台車を採用せずぺデスタル式のFS-372。通風機もグローブ形ベンチレータとありとあらゆるところで見切りをつけています。しかし西武鉄道に限って言えばそれは決して安物電車にならないんです。
 なぜ西武鉄道はそこまで大胆にドレスダウンできるのか。

 システムとしての基本パッケージがとてもしっかりしているからです。

 界磁チョッパ制御は架線電圧が不安定ですとてきめんにブラシが荒れたり走行性能にむらが出ます。それは当然音や振動、乗り心地に跳ね返りますが、西武2000系に乗っていてそのような不快な思いをしたことはまずありません。乗り心地だって関東私鉄の中でむしろ上級の部類に入ります。なぜか。
 保線や電路整備が入念なんです。つまり車両を取り巻くインフラが一級品なんで、車両はそこそこの仕様でもしっかりとした走りができるんです。どんなに豪華な仕様を取り入れたって、整備が駄目なら本来の性能を発揮できません。
 西武2000系が企画されたとき、実はミンデン台車の使用が検討されました。しかし、価格差の割には乗り心地に顕著な差が出ないということで見送られた経緯があります。

 そんなことはありません。ミンデンの乗り心地がぺデスタルの一般的な台車と変わらないのならどこの事業者だって安い台車を採用します。しかし現実にはミンデンは民鉄で多く普及しています。
 値段分の差はあるんです。それなのに西武は「たいした差はない」と言い切った。
 それだけ保線に自信があるということです。
 2000系は通勤用なので大胆にドレスダウンしています。座面の前後幅は詰めましたが、座面はむしろ厚くとりました。安価な鋼鉄製なので窓は2段窓ですが、上段はバランサつきです。通風機はグロベンですがラインデリアつきですからハンデになりません。足回りに関してはこなれた標準品を使いつつも、インフラがよいのでしっかりとした走りを見せます。
 2000系は101系に比べあちこちで見切っていますが、決して安っぽく見えないのは設計者が見識を持ち、センスあるドレスダウンを行ったからです。センスは教養です。教養は知識です。それゆえに2000系は製造から30年を経過してもなお、古さを感じさせない優秀なスタイリングと走りを見せてくれるわけです。

 ドレスダウンとはお金をケチることではありません。お金をどのように使うかを見識もって検討することです。
 昨今は車両のコストダウンについて鉄道事業者の関心は高まっていますが、ケチな安物電車になるか、センスあるドレスダウン電車になるかは、事業者の見識にかかっているわけです。
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▲もっとも、見識もって作っても時代を読み違えると使いにくい電車ができてしまうこともあります。同じ西武鉄道でも3000系は狙いもわかるし素性は申し分ないんだけど、いかんせん時代を読みそこなった……。

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Author:サマンサ
 三度の飯より電車が好きな鉄道マニアの戯言。
 似顔絵は■裂斬ブログ■より。

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